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東京高等裁判所 昭和35年(く)75号 決定 1960年7月15日

少年 F(昭一七・七・三〇生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、抗告申立人名義の抗告申立書に記載せられているとおりであるから、ここにこれを引用する。

本件少年保護事件記録及び少年調査記録によると、本件審判にかかる非行は少年が昭和三十五年四月二十九日より同年五月五日までの間、前後三回に亘り、少年の肩書○子アパート内において、Y、○戸ことS等と共謀の上、映画見物の客として誘い込んだ○木○一外八名を脅迫し合計金三万六千円を喝取したと云う事件であつて、何れも少年がその主動的役割を演じており、又その非行の態様は極めて悪質と云わなければならないこと。少年は昭和三十四年五月頃から台東区浅草においてテキヤ仲間に入り夜は所謂ポン引などをなし、本件に至る間に道路交通取締法違反軽犯罪法違反等にて検挙せられること前後八回位に亘り、罰金、科料に処せられること三回に及び又昭和三十四年十二月二十三日には恐喝罪により懲役一年、三年間執行猶予の言渡を受けたにもかかわらず、依然としてその生活態度を改めず遂に本件非行に及んだものであることが認められ、これに少年の家庭状況、不良交友、鑑別結果に見る少年の資質特にその心情質変調高度等記録に顕われた諸事実を考量すると、少年を一定期間中等少年院に収容してその環境を調整し、その性格を矯正するの措置を講ずるを以て適切妥当な方策と認めざるを得ない。よつて少年を中等少年院に送致する旨の原決定は洵に相当であつて、抗告人主張の如く不当な処分とは考えられないから、本件抗告はその理由がなく、少年法第三十三条第一項に則りこれを棄却すべきものとし主文の如く決定する。

(裁判長判事 三宅富士郎 判事 東亮明 判事 井波七郎)

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